【column】Golden Stoutの醸造小噺

【column】Golden Stoutの醸造小噺

こんにちは。

ブルワーの伊藤です。

ビアEXPO終わったあたりから背中が痛いです。

本当に何とかしたい、ただそれだけ。もんでもダメ。伸ばしようもない場所。

 

今回のcolumnは4月8日にリリースした

「Golden Stout」の醸造小噺をしていけたらと思います。

 

 

はじめにビールの詳細です。

 

スタイル:Golden Stout

ABV(アルコール度数):5.0%

SRM(色味):4

IBU(苦み):20

原料:麦芽(ドイツ製造)、パン(小麦)、乳糖、コーヒー豆、ホップ/炭酸ガス
(麦芽使用率50%以上)

 

 

このスタイルの発祥は詳しくは分からないのですが、

Golden=極めて淡色の液色

Stout=黒ビール

といった、一見矛盾している名前のビアスタイルです。

 

つまるところ、GoldenカラーなのにStoutのようなロースト、チョコレート、レーズンといった味わいがあるビールになります。

淡色なのにどうやるんですかー

コーヒー豆やカカオニブ、バニラビーンズを使用して濃色麦芽の代わりになってもらうメカニズムです。

日本では3‐4年前に、多くのブルワリーで醸造されていた記憶があります。

 

 

そうしましたら、今回のこだわりポイントをば。

 

・原料

ビアスタイルの説明時に原料にはカカオニブやバニラビーンズを使うと言いましたが、

お気づきの方もいらっしゃると思いますが今回は使用してません。

 

理由として、コーヒー豆のポテンシャルに気づいてしまったからです。

 

今回は町田の「野津田焙煎研究所」(https://nozutabk.base.shop/)さんに

コーヒー豆を使用させていただいたのですが

その際に、どの豆が適しているか沢山テストさせてもらいました。

 

いやー、すごいですね。

ワイン、レーズン、スパイシー、オレンジ、花、etc…

 

こんなに種類によって香りが様々なら、カカオニブとか他の副原料いりません、シンプルに豆で勝負したいってなりました。

 

 

・糖化

黒ビールたらしめるのは、個人的には麦の甘さが必要だと思うのです。

しかし、ビールに色味が出てしまうため、麦芽は淡色モルトしか使えないです。

 

そのため、今回は糖化温度を高めに設定することでα-amylaseを働かせて

不発酵糖をつくってもらい、最終比重を高めにしました。

コーヒーのフレーバーだけだとアンバランスになるので、しっかりと土台に甘さはほしいというわけです。

 

 

・発酵、貯酒

イーストはシンプルにイングリッシュエールイーストを使用して

柔らかめのフルーティーなエステルを出してもらいました。

 

発酵が終了して、酵母を引いたらここで主役の登場。

 

「コーヒー豆」です。

 

今回は悩んだ末、2種類使用。

 

1回目のスティープは野津田焙煎研究所さんのブレンド豆を使用し

焙煎香、チョコレート、コーヒーのベースとなるフレーバーを付けました。

 

2回目は詰める直前に。

ブラジルのかなりスパイシー系な香りのする豆を使用。

本来このビアスタイルに使用されるカカオニブにある、ナッツやスパイシーな要素を足しました。

 

 

 

以上になります。

 

知らない分野との合作と言いましょうか、未知なる世界に足を踏み入れるのは実に面白いです。

クラフトビールにはそんな側面がたくさんあるので、私はやめられないのだろうなーと

しみじみ感じさせるブルーイングでした。

 

 

ではまた。