【column】パン屋もいろいろ

【column】パン屋もいろいろ

パン職人兼ブルワーですが。
今年のイベント出店も残りわずか。疲れたとかカラダ痛いとかはあるものの、お客様が喜んで飲んでいる笑顔をみられるのはとても励みになります。

さて、ひと口にパン屋といっても2種類あります。
小学生の将来なりたい職業でときどきランクインすることもあるパン屋さんです。ビールと同じで麦と水、酵母をつかって出来ていて、大雑把にいうと発酵のメカニズムもほぼ同じです。酵素や酵母の活動で味わいや香り、炭酸ガスなどいろいろな生成物が複雑に絡み合って製品のディテールを形づくっていく、とても繊細な工程管理を必要とします。
大別するといわゆるオーブンフレッシュベーカリー(OFB)と工業製パンの2種類に分かれていて、OFBは皆さんもご存じのように、お店で職人さんたちが手づくり(多少、機械を使いますが)でパンを焼きあげて、焼き立てを提供しています。
工業製パンでは、技術者が生産工程を分業・連携して大量の製品を生産することで様々な小売店や業種に卸売りをおこなういわゆる製パンメーカーのことで、大小さまざまな企業が全国で活躍しています。

どちらも出来上がるのはパンですが仕事の内容は驚くほど違っています。
OFBは職人的で、スタートの原料計量から発酵、焼き上げまで、すべてを自分の目と手と経験・知識で組み立ててパンをつくっており、つくる人の個性が反映しやすいといえます。同じレシピと工程手順でも、職人さんによって微妙に違いが出るのが面白いところです。
工業製パンではエンジニア的な要素がつよくて、中には担当工程に特化しすぎていてパンをつくれない人もいるくらいです。その反面で、担当工程においてはまさにスペシャリストですし、大型機械設備を手足のように使いこなして生産を支えています。

仕事の形態は異なるけれどどちらにも共通する重要なことがあります。
それは「食べる人に対する愛情」だと私はおもっています。
なんかちょっとアレですね、照れくさいですが。
自分がつくった製品を食べてくれる人たちに、自分はプロとしてどんな喜びを提供できるか。このことが何よりも大切なんだとおもっています。
わたしたちはパンをつくるしクラフトビールをつくっています。
どちらも食べてくれる、飲んでくれる人がいてはじめて完成するものです。
「美味しかった!」、「気に入っちゃった」、「最高だった」そんな声があって私たちの仕事は完結するとおもっています。
だからイベント参加はやめられません。
製品を通してダイレクトに皆さんの笑顔に接することができる貴重な時間ですので。