【column】パンのミミを使ったビールの作り方(煮沸編)

【column】パンのミミを使ったビールの作り方(煮沸編)

こんにちは。ブルワーの石井です。
暖かくなるかなと思いきや、まだまだ寒い日が続いています。工場がある海老名市はもともと田んぼのところに高層マンションが建っている土地なので風が強くて寒いです。みなさんも体調には十分気を付けてお過ごしください。

今回のcolumnは前回「糖化」の続き、「煮沸」について説明をしたいと思います。
煮沸って、言葉の通り麦汁をグツグツ煮る作業なのですが、ビールの味や香り、品質に大きく関わる工程です。ちなみに煮沸以降では通常のビールでもパンのミミを使用したビールでも内容に変わりはありません。


○煮沸する理由ってなに?
ビールという製品は、普通は冷やして飲んでいるのに、醸造工程では100℃程度で煮沸します。この役割には以下の理由があります。

(1)ホップの苦味と香りを引き出す
ご存じの通り、ビールの「ホロ苦さ」や「いい香り」はホップのおかげです。でもホップはそのまま入れても味が出ません。煮沸することでホップの成分「α酸」が「イソα酸」に変化して、ちゃんとした苦味がつくことになります。
ホップは「いつ入れるか」で、ビールの苦味や香りが変わります。入れるタイミングはいろいろあって語ると長くなるのですが、簡単に言うと「苦味を強くしたいなら早め、香りを重視したいなら遅め」となります。
(2)麦汁をキレイにする(殺菌・不純物の除去)
麦芽をお湯で煮出した麦汁には、まだいろいろな雑菌など余計なものが混じっています。
麦汁をしっかり煮沸することで、余計な雑菌をやっつけて、キレイな麦汁に仕上げます。
(3) 不快な臭いを飛ばす
麦汁の中にある不快な香りの成分(DMSといいます)が残るとイヤな香りがついてしまうので、煮沸することでその香りをしっかり飛ばします。
(4) 余計なタンパク質をまとめる
麦汁にはたんぱく質もたくさん入っていて、これがビールの濁りや劣化の原因になることもあります。煮沸するとタンパク質が固まって沈殿しやすくなり、クリアなビールを作ることができます。
煮沸が終わったビールは「ワールプール」という、タンクの壁面に沿って麦汁を回転させることでタンクの中心部分に不要なたんぱく質などをまとめます。

(5) ビールの色とコクを調整する

煮沸の時間によって、麦汁の糖分が「メイラード反応」を起こして、カラメルっぽい風味や濃い色をつけることができます。

煮沸は一般的には90〜100℃で60〜90分くらい煮るのが基本です。Better life with upcycleでは100℃で60分間、また不快な香りを飛ばすため煮沸タンクの窓も開けた状態で実施しています。熱を加えすぎると吹きこぼれてしまうので、吹きこぼれないようずっと監視して温度調整をしています。今は冬なのでまだよいですが、夏場はもう暑くて煮沸の時は汗びっしょりになります。

煮沸が終わった麦汁は次回の【発酵・熟成編】に移ります。