こんにちは。
ブルワーの伊藤です。
暑いです。我、塩タブレット常備食也。
今回のcolumnは少し変わって、読者の方と一緒に勉強をしていこうと思います。
ビールは当たり前ですが飲み物であり、嗅覚と味覚で楽しむ嗜好品ではありますが
視覚的にも大変楽しめるものであります。
タイトルにある「キラキラ」という表現を私はよく使うのですが、どういう感じかというとビールを通して奥の景色が見えるくらい透明な状態です。
上がってくる炭酸の泡に光が反射してキラキラと輝いており、味わいもクリアで雑味が少ないことが多いです。
このように飲む前から楽しいビールではありますが、キラキラたらしめる原因はなんでしょうか。
実際はビールはいくつもの原料によってできているため、実はこれ!というものは存在しません。
いくつもの要素が合わさることで、濁ったりキラキラしたりしております。
今回はいくつもある要素のうちの1つにスポットを当てていきましょう。
【酵母】
ビールの原料に酵母が使われていることはご存知の方も多いと思います。
その酵母が発酵して主にアルコールと炭酸ガスを生成してビールにしてくれています。
みなさんはクラフトビールをグラスに注ぐと、缶(もしくはボトル)の底に沈んでいた酵母のオリが最後の方に出てきたことはあるでしょうか。
これがグラスに入ると、たちまちビールが濁り始めてしまいます。
これは一度に注ぎ切った方がよいとか、いいやオリ絡みは上澄みのクリアなビールを飲み終わった後でしょ、などオリ論争が繰り広げられることもしばしばありまして。
このように濁りの原因となる酵母ですが、キラキラとしたビールにはどのようにすればよいのでしょうか。
それは、酵母の性格をしっかり把握しておくことだと思います。
この酵母は9%のアルコールしか耐えられないのにアルコールを12%作らせようとか、
24℃までしか耐えられないのに、28℃で発酵させてみようなど、酵母にも向き不向きの環境があります。
そういったものを分かったうえで発酵させ、管理していくことがキラキラに近づくのかと。
今回は酵母メーカーのFermentis社の商品ページを参考に、酵母の性格を紐解いていきましょう。
(引用:https://fermentis.com/en/product/safale-us%e2%80%9105/)
こちらは「US-05」というアメリカンエールイーストです。
大変お世話になっているブルワーさんも多いのではないでしょうか。そのくらいスタンダードな酵母です。
上からいきましょう。
はじめは商品説明です。
ニュートラルでどんなビールにも使えるアメリカンエール酵母的なことですね。
クリスピーでホップを多用したビールに最適な酵母。
下にいくと、いくつか項目分けされた表示があります。
ここに酵母のキャラクターが記載されています。
・Total esters
総エステル量。酵母はエステル類を生成することでフルーティやフローラルな香りを生むのですが、それの大小です。US-05は少ないようですね。
・Total sup. alcohols
総アルコール生成量。suppliorてsup.って略すんですね。
US-05はMediumですが、中くらいってどのくらい?
後述するアルコール耐性が9-11%とあるので、アルコール生成が糖源に依存してはおりますが8%くらいは出してくれるということでしょうか。それ以上だとストレスがかかりオフフレーバーが出そうです。
・Apparent attenuation
発酵度。その酵母が最初に麦汁にある糖をどのくらい消費するかということで、ラガーイーストなどはもう少し高いのでドライな仕上がりになります。
・Sedimentation time
沈むのに要する時間。要は凝集性。今回のキラキラのポイントはここです。
この酵母は中程度ですが、ラガーイーストなどキラキラしたビールはHighであることが多いです。
言わずもがな、凝集性が高い酵母であっても健康状態が悪いとしっかり凝集してくれません。
一概には言えませんが、クリアなビールはしっかり調整、管理されている証拠でもあります。
中程度でもまったくもって酵母が沈まないわけではなく時間がたてば沈んでキラキラすることはできます。
ただ酵母も口当たりなどボディに影響しますので、必ずしもキラキラさせてしまうとスッキリしすぎちゃうということもあるので、ターゲットをどこにおくかで操作も変わってきます。
また沈んだ酵母も何度もタンクから引いてあげると、それに伴って出来上がりの量も減ってしまうし商品化までの時間も長引いてしまうのでブルワーの悩みどころです。
・Alcohol tolerance
アルコール耐性。ほとんどが9-11%程度ですが、ストロングエール系の酵母はもう少し高いです。自分で作ったアルコールで死滅してしまうので、周辺の環境に適応した結果なのでしょうか。
・Phenolic Off-Flavor
フェノール系のオフフレーバー。オフかどうかは目指すスタイルによって違うので、ここではフェノール系の香りがありかなしかぐらいで。
フェノール系はベルジャンイーストなどでは + が多いです。クローブのような、うがい薬のイソジンのような、ブラックペッパーのような特有の香りがあります。
以上になりますが、公式の商品ページだけでもこんなに分かることがありました。
これ以外にも実際は調べたら必要な情報がわんさか出てきます。発酵温度やpH、ピッチング方法、保存方法etc.
これらをしっかり理解してあげて初めてキラキラできるわけです。
ストレス、ダメ、ゼッタイ。酵母も人間も一緒です。
実際は物理的にフィルターを通したり、遠心分離で取り除いたりといったことも可能なのですが
弊社のようなマイクロブルワリーでは手が出せないのが現状なので、それについては今回は触れませんでした。
また始めの方であげたように酵母以外にも濁りの要因はあります。それは別の機会でcolumnにできたらと思います。
駄文ではありましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。
ではまた。