こんにちは。
処方してもらった薬がドンピシャで、ほぼ花粉の症状がないブルワーの伊藤です。
これってなんなんですかね。ありがたい話ですが。
そして今回のcolumnはありがたい話ではないですが、今週の火曜日にリリースした
「1st Anniv. Hazy DIPA」の醸造小話をしていけたらと思います。
はじめにビールの詳細です。
スタイル:Hazy Double IPA w/ Amazake
ABV(アルコール度数):8.0%
SRM(色味):2
IBU(苦み):-
原料:麦芽(ドイツ製造)、麹、米、パン(小麦)、ホップ/炭酸ガス(麦芽使用率50%以上)
このスタイルは「Hazy=霞んでいる」という意味なのですが、
ホップなどのポリフェノールがタンパク質と結合して大きくなり濁ることに起因してます。
ホップを多量に使ったホップフレーバーマシマシといったビールですね。
流行りのスタイルです。
実はブルワーとして、はたまた飲み手としてHazy系にお疲れだったので距離を置いていたのですが、
とうとう仕込むかーという超個人的な背景があります。
モルティなビールが盛り上がってきたといわれてますが、
やはりまだHazy好きな人多いですし。みんなでワイワイ飲んでもらいたいですし。
また今回のレシピを組むにあたり、周年を祝うビールのためプレミア感がほしかったです。
ただホップ使いましたーというだけでは、他のHazyと大差ないです。
・ABVは高め。それでいて飲みやすく(笑)
・ホップは常用されるペレットホップ以外にも濃縮したもの使いたいねー。
・アロマもホップ以外に副原料プラスして変化を付けようかなー。
とか考えてました。
そして同じ海老名の酒蔵である『泉橋酒造』さんにお力添えいただきました。
日本酒の原料である酒米は「精米」と言って削ってから仕込むのですが、
その削って出た削り粉をいただきました。泉橋さんは白糠って呼んでました。
それでは工程ごとに分けて、こだわりポイントをば。
- 糖化
先の白糠を糖化で麦芽やパンのミミと一緒に入れてます。
これだとフツーに糖源として使った感じですが、実は前日に米麹とお湯と混ぜ合わせて甘酒を作ることで、
まろみを出し、その甘酒を糖化時に混ぜ合わせました。
これがかなり面白い仕上がりになりましたが、味については後ほど触れることとします。
- 煮沸
ここではホップを入れていくのですが、Better life with upcycleでは初、というか
あまり他も使用しているところは少ない気がしますが、ホップの香り成分を抽出したSalvo™というものを使用しております。
なぜ抽出したものを使用するのかというと、ホップアロマの元というのはオイルでして、
大量のオイルを必要とすると、それに伴ってホップ量も多くなります。
最初の方で出てきましたペレットホップというのがブルワーがよく使うホップでして、
植物質が多く、大量のホップを入れるととグラッシー(草っぽさ)になります。
またホップかすも増えるため、味だけでなく出来上がりの量も減ってしまうので、
こういった抽出した製品があるわけですね。
ただこいつが常温だと固すぎて苦戦。
製品のHPを読むと使用前は温めろと書いてありました。
やっとピッチできました。所感としては1000Lの麦汁に足して1000g入れたのですが
それだけでかなりホップのアロマが乗った印象でした。
値は張りますが、収量も上がるしいい感じです。
ただこれだけだと、オイリーな飲み口になるため、
ペレットホップも後ほど発酵タンクに移した後で使用してます。
ドライホッピングというやつですね。
グラッシーさがないとバランスがすごい悪いんですよ。
でも味なんて好き嫌いの世界なので「オイリーなビールが好きっ!」って人もいますのでね。そこは。
- 発酵
イーストは今回Belgian Aleイーストを使用しました。
Hazy系にはまあまあ使用しているところのあるAmerican Aleイーストだと、
エステルというフルーティな香りが出ます。
比べてBelgian系の特徴はしっかり糖を食べて(発酵度が高いということ)
仕上がりはドライになります。
ですので、ホップと麹のアロマを楽しみつつ、ドリンカブルなHazyを目指すにあたり、
American Aleイーストはドリンカビリティに欠ける気がしました。
長くなりましたが、各工程でこだわったつもりです。
実際に出来上がりのビールですが、ホップアロマのグレープフルーツのような柑橘やミントっぽさも感じます。
飲んでみると甘酒のやさしい甘さと、清酒を思わせるような麹のニュアンスが面白いです。
ただBelgianイーストにしたことで、たるい感じはないです。
先日の周年記念イベントにお越しいただいた皆様もきっと楽しんでいただけたのではないでしょうか。
私もビールという飲み物は本当にいいなーと、悦に浸っておりました。
甘酒仕込み時の白糠はかなりダマになり、つぶすのに骨が折れたのですが
本当にやってよかったです。
ではまた。